「役員の自宅を経費にしたい…」
「役員社宅で節税するためにはどうすればいい?」
このような疑問にお答えします。
役員の自宅も法人の経費にすることはできちゃいます。しかし、細かい要件があるので、個人事業主のようにカンタンではないです。
役員社宅は経費にできるの?
役員社宅は経費にできますが、2つの条件を満たす必要があります。
- 賃貸契約は法人名義であるか
- 賃貸料相当額を役員が負担しているか
賃貸契約は法人名義であるか
役員社宅として、会社が役員に住居を貸し出すためには、その住居の賃貸契約は法人名義にする必要があります。
入居者が直接契約している場合の家賃負担は、社宅の貸与とは認められないので、給与として課税されます。
国税庁:役員社宅
よく考えてみればわかるのですが、個人で借りた住居の費用を、会社が負担するのはおかしいですよね。もし賃貸契約が法人名義でないと、役員社宅の貸付けとは認められないので、法人が負担した家賃は、役員報酬として課税されてしまいます。
これではまったく意味がないです。かならず法人名義で賃貸契約を結んでください。とはいえ、実績がない法人だとなかなか契約してもらえないかもです。
賃貸料相当額を役員が負担しているか
役員社宅は無料ではありえません。かならず役員が賃貸料相当額を負担している必要があります。
この賃貸料相当額ですが、家賃の50%以上を役員が負担していれば、ほぼ問題なしです。
このあと少し詳しく説明しますが、読み飛ばして構わないです。だって家賃の50%を役員が負担するようにすればOKなので。
さて話しを戻して、賃貸料相当額ですが、物件の規模によって計算方法が異なるんですよね。これが。
物件の規模は2つあって、
- 小規模な住宅である場合
- 豪華社宅
です。税法では物件の規模について、下記のように定義されています。
小規模な住宅とは、法定耐用年数が30年以下の建物の場合には床面積が132平方メートル以下である住宅、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には床面積が99平方メートル以下(区分所有の建物は共用部分の床面積をあん分し、専用部分の床面積に加えたところで判定します。)である住宅をいいます。
国税庁:役員社宅
いわゆる豪華社宅であるかどうかは、床面積が240平方メートルを超えるもののうち、取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等各種の要素を総合勘案して判定します。なお、床面積が240平方メートル以下のものであっても、一般に貸与されている住宅等に設置されていないプール等の設備や役員個人のし好を著しく反映した設備等を有するものについては、いわゆる豪華社宅に該当することとなります。
国税庁:役員社宅
よくわかんないですよね。
正直に申し上げて。
さらに、小規模な住宅だと下記の計算方法で賃貸料相当額が求められます。
次の(1)から(3)の合計額が賃貸料相当額になります。
- (1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
- (2) 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))
- (3) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
国税庁:役員社宅
もう目が回ってきます。
一方で、豪華社宅だとこのように計算します。
(1) 自社所有の社宅の場合
次のイとロの合計額の12分の1が賃貸料相当額になります。イ (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%
ただし、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には12%ではなく、10%を乗じます。ロ (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%
(2) 他から借り受けた住宅等を貸与する場合
会社が家主に支払う家賃の50%の金額と、上記(1)で算出した賃貸料相当額とのいずれか多い金額が賃貸料相当額になります。国税庁:役員社宅
細かい要件は多くありますが、実務上は家賃の50%を役員社宅として計上するケースが多いです。
役員社宅で節税するメリットとは?
役員社宅で節税するメリットはこれですね。
- 家賃を会社の経費とすることができる
- 社長個人の所得税・住民税の節税ができる
- 会社・個人ともに社会保険料を軽減できる
カンタンな例を挙げて説明します。
役員社宅があれば、役員の手取り額が増えて、会社の経費も増える
たとえば、役員報酬が50万円で、自宅の家賃が20万円だと、役員の手取りは19万円です。
一方で、会社の経費は57万円です。
役員 | 会社 | |
役員報酬 | 500,000 | 500,000 |
所得税、住民税 | 40,000 | 0 |
厚生年金、健康保険 | 70,000 | 70,000 |
地代家賃 | 200,000 | 0 |
役員:手取り額、会社:合計経費 | 190,000 | 570,000 |
上記の例で、役員社宅を導入するとつぎのようになります。
家賃の負担は50%ずつです。
役員 | 会社 | |
役員報酬 | 400,000 | 400,000 |
所得税、住民税 | 30,000 | 0 |
厚生年金、健康保険 | 60,000 | 60,000 |
地代家賃 | 100,000 | 100,000 |
役員:手取り額、会社:合計経費 | 210,000 | 560,000 |
ご覧の通り、役員の手取りが増えます。役員報酬が下がったため、税金と社保の負担が下がりました。また家賃の半分は会社が負担するようになったので、手取りが2万円増えていますよね。
このように役員社宅を導入すれば、節税が期待できます。上記の例はあくまで1ヶ月分なので、これが数ヶ月、数年となっていけば大きな金額になりますよね。
まとめ:役員の自宅は経費にできます!役員社宅で節税しましょう。
役員の自宅を経費にすることはできますが、下記の2つの条件を満たす必要がありました。
- 賃貸契約は法人名義であるか
- 賃貸料相当額を役員が負担しているか
とくに賃貸契約はかならず法人名義にしてください。これを個人のままにしてしまうと、税務調査でカンタンに否認されちゃいますよ。
また役員社宅をするときは、家賃の50%を役員に負担させるようにしましょう。細かい計算方法はありますが、だいたい50%の金額を負担していれば問題なしです。
ちいさな節税を積み重ねて、キャッシュを増やしましょう。