「帳簿の付け方がわからない…」
「簡単に帳簿を書く方法はないの?」
上記のような疑問に、会計事務所歴5年のホスメモがお答えします。
じつは帳簿には付け方が複数あって、簡単な方法もあります。
そしてこれから紹介するのは会計事務所の多くが採用している帳簿の付け方です。
初めて帳簿を作る方はこれから紹介する帳簿のルールを守っていただければ、最短で帳簿を作れますよ。
また記事の後半で、現金主義の帳簿のデメリット事例を公開しましたので参考にしてください。
ホスメモ流もっとも簡単な帳簿の付け方【初心者向け】
ホスメモ流もっとも簡単な帳簿の付け方はこちらです。
- 現金主義で仕訳を作成
- 決算で発生主義につじつまを合わる
補足をすると、現金主義は現金を支払ったときに仕訳を認識します。
いっぽうで発生主義は取引が発生したときに仕訳を作る。
これをおさえたうえで見ていきましょう。
1、現金主義で仕訳を作成
帳簿は現金主義に則って作りましょう。これがもっとも簡単な方法です。
現金主義とは、①現金を受け取ったとき、②支払ったときに仕訳を作るルールですね。
たとえば3月の売上が4月に入金されたとします。
そのときの仕訳は4月に計上します。
日付 | 借方 | 借方金額 | 税区分 | / | 貸方 | 貸方金額 | 税区分 | 摘要 |
4/30 | 現金 | 300,000 | – | / | 売上 | 300,000 | – | 3月売上 |
これが現金主義の仕訳です。
発生主義にすると難易度が上がる
いっぽうで上記の取引を発生主義に修正すると面倒です。
3月にいったん売掛金を計上して、4月に売掛金の残高を取り崩すので仕訳数が増えてしまうためです。
仕訳で見てみましょう。
3月で売掛金の計上。
日付 | 借方 | 借方金額 | 税区分 | / | 貸方 | 貸方金額 | 税区分 | 摘要 |
3/31 | 売掛金 | 300,000 | – | / | 売上 | 300,000 | – | 3月売上 |
4月に入金。
日付 | 借方 | 借方金額 | 税区分 | / | 貸方 | 貸方金額 | 税区分 | 摘要 |
4/30 | 現金 | 300,000 | – | / | 売掛金 | 300,000 | – | 3月売上 |
発生主義で毎月帳簿を作ると、どんどんめんどうになっていきます。
なので期中は現金主義で仕訳を作りましょう。
あとで解説しますが、会計事務所のほとんどのがこの方法を採用しています。
2、決算で発生主義につじつまを合わる
現金主義で帳簿をつけると説明しましたが、決算時だけは発生主義で仕訳を作ります。
そうすれば、1年間の決算書の残高は発生主義に則った数字になるからです。
たとえば12月の売上が1月に入金される個人事業主さんで考えますね。
1月から12月まで、入金があるたびに売上の仕訳を作ります。
そして12月31日時点で未回収の売掛金を、決算仕訳として計上します。
仕訳はこれですよね?
日付 | 借方 | 借方金額 | 税区分 | / | 貸方 | 貸方金額 | 税区分 | 摘要 |
12/31 | 売掛金 | 500,000 | – | / | 売上 | 500,000 | – | 決算 |
このように、売上だけではなく仕入れ、給与など金額が大きいものを決算仕訳で発生主義につじつま合わせします。
どの勘定科目で決算仕訳が必要になるかは、「決算処理の手順は?どこから始めればいい?【貸借対照表が最初】」にまとめてあるリンク先の記事を読んでください。
ここだけの話しですが、すべての勘定科目で決算仕訳をしなくてOKです。
売上や仕入れ、給与、家賃のように金額が多いものだけでもいいと思います。
というのも、簿記には「重要性の原則」があり、帳簿の簡素化を図っているからです。
たとえば個人事業主が12月分のNTTの電話代6,000円を1月に払ったとして、わざわざ未払費用で計上しなくても大丈夫。
金額が小さいですからね。
法人税法にも似たような考え方があり、「短期前払費用」があります。
けっきょく「期ずれ」。税額に対する影響は大きくありません。
そして継続的に同じ処理をすることも大事です。
期中が現金主義の帳簿のメリット・デメリット
期中が現金主義の帳簿のメリット・デメリットをさらっと示しておきますね。
- メリット①:仕訳数が少ない
- メリット②:貸借対照表の管理がラク
- メリット③:ほとんどの会計事務所で採用されている
- デメリット①:毎月の収支の分析には向かない
- デメリット②:毎月の経営状況を把握できない
なぜかというと、仕訳数が少なくて簡単に帳簿を作れるから。
税理士は税金の計算さえできればOKなので、経営分析や経営アドバイスは求められない限りしません。
そこまで手をかけてしまうと、税理士の負担がどんどん大きくなります。
あなたに知っておいてほしいのは、期中が現金主義の帳簿のデメリットです。
実例で解説します。
現金主義の帳簿では経営状況を把握できない実例
ここだけの話、私は両親の会社を事業継承している最中でおりまして、そのまま同じ税理士をしぶしぶ雇っています。
その税理士の試算表があまりにひどかったのでここで紹介します。
ダメな試算表の例です。
※実際の数字です。
自 2020年 3月~至 2020年 6月 | |||||
勘定科目 | 当期累計 | 20年 3月 | 20年 4月 | 20年 5月 | 20年 6月 |
売上高 | 12,400,759 | 2,747,038 | 5,821,050 | 2,487,981 | 1,344,690 |
売上原価 | 6,722,863 | 114,462 | 3,856,643 | 2,063,655 | 688,103 |
売上総利益 | 5,677,896 | 2,632,576 | 1,964,407 | 424,326 | 656,587 |
販売費・一般管理費 | 5,706,204 | 1,340,713 | 1,487,342 | 1,457,823 | 1,420,326 |
営業利益 | -28,308 | 1,291,863 | 477,065 | -1,033,497 | -763,739 |
営業外収益 | 267,257 | 64,792 | 74,447 | 62,290 | 65,728 |
当期純利益 | 238,949 | 1,356,655 | 551,512 | -971,207 | -698,011 |
ぱっと見、コロナで経営が悪化したと思いますよね?
でも実際は全然違うんですよ。
まず見ていただきたいのは、一番下の当期純利益。
3月は大きな利益が出ていますが5月、6月は大幅な赤字になっています。
でも商売をしていて、赤字の感覚は全然なかったんですよね。
幸いにコロナの影響も受けていなくて毎月多少の利益が出ていると感じていました。
つぎに見てほしいのは、売上原価。
3月の売上原価が114,462円となっていて、異常に低いです。
わたしの会社では売上の4割ほどが売上原価(仕入れ)になるので、ここまで売上原価が低いのはありえません。
そこで仕訳をチェックしていくと、仕入れの仕訳が現金主義になっていたんですよ。
つまり、買掛金の計上がなく、3月の仕入れが4月で計上されていました。ひと月ずつズレています。
修正後の試算表
仕入れの仕訳を発生主義に直すと、このような試算表になりました。
自 2020年 3月~至 2020年 6月 | |||||
勘定科目 | 当期累計 | 20年 3月 | 20年 4月 | 20年 5月 | 20年 6月 |
売上高 | 12,400,759 | 2,747,038 | 5,821,050 | 2,487,981 | 1,344,690 |
売上原価 | 6,722,863 | 1,114,462 | 3,856,643 | 863,655 | 888,103 |
売上総利益 | 5,677,896 | 1,632,576 | 1,964,407 | 1,624,326 | 456,587 |
販売費・一般管理費 | 5,706,204 | 1,340,713 | 1,487,342 | 1,457,823 | 1,420,326 |
営業利益 | -28,308 | 291,863 | 477,065 | 166,503 | -963,739 |
営業外収益 | 267,257 | 64,792 | 74,447 | 62,290 | 65,728 |
当期純利益 | 238,949 | 356,655 | 551,512 | 228,793 | -898,011 |
印象が全然ちがいませんか?
帳簿を発生主義に直してみると、毎月しっかり利益を出していて、経営状況が健全なのがわかります。
あと6月は赤字になっていましたが、これは売上で計上漏れがありました。
このようなに、現金主義の帳簿だと経営状況がよくわかりません。
「大きな赤字を出してしまった」と、変に不安に駆られてしまうことだってあります。
毎月の利益を確認したいときは、帳簿は発生主義で管理したほうがいいでしょう。
まとめ:簡単な帳簿の付け方は現金主義で。決算仕訳で発生主義につじつまを合わせよう
ホスメモ流もっとも簡単な帳簿の付け方はこちらでした。
- 現金主義で仕訳を作成
- 決算で発生主義につじつまを合わる
この方法は会計事務所が中小企業向けの帳簿作成で採用していますよ。
大企業になるとすべて発生主義で帳簿を作りますけれどね。
それと現金主義で帳簿を作ると、月次の経営状況をただしく表すことができませんでした。
すでに税理士を雇っている方は、発生主義で帳簿をつけさせないと経営判断を間違うリスクが潜んでいるので注意しましょう。