「消費税は簡易課税を選んだ方が有利なの?」
「簡易課税ってどんな仕組み?」
「簡易課税の区分はどれ?」
このような疑問にお答えします。消費税の確定申告が必要な方は、消費税を計算するときに簡易課税制度を選択できます。ざっくりした説明をすると、人件費が多くて、その他の経費が少ない人は、簡易課税を選択したほうが有利です!
消費税で簡易課税を選んだほうが有利?
消費税で簡易課税を選んだほうがいいのは、下記の2パターンです。
- 人件費など消費税がかからない経費が多い職種
- みなし仕入れ率が高い職種
それぞれのパターンの解説をするまえに、簡易課税を選択できる前提条件を説明させてください。簡易課税制度は誰でも選べる制度ではないんです。
簡易課税制度を適用する条件とは
この2つです。
- 前々年の課税売上高が5,000万円以下であること
- 簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を事前に提出すること
簡易課税とは
その課税期間の前々年又は前々事業年度(以下「基準期間」という。)の課税売上高が5,000万円以下で、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を事前に提出している事業者は、実際の課税仕入れ等の税額を計算することなく、課税売上高から仕入控除税額の計算を行うことができる簡易課税制度の適用を受けることができます。
国税庁:簡易課税
重要なのは、前々年度の課税売上が5,000万円以下であることですね。じつは、この制度は中小企業向けなんです。消費税の計算が難しいので、国が中小企業に譲歩している感じです。
課税売上が5,000万円以下であれば、届出書を提出することで、簡易課税を選択できます。ただし、いちど選択すると2年間は消費税の計算方法を変更できないので、よく考えたうえで選択しましょう。
つづいて、簡易課税の計算方法を説明させてください。すみません。
簡易課税の計算方法
簡易課税の計算方法はこれです。
- (課税売上高×消費税率)-(課税売上高×消費税率×みなし仕入率)=支払う消費税額
ここで重要なのは、「みなし仕入れ率」です。みなし仕入れ率は、事業区分によって%が違い、卸業や小売業は90%、80%と高いパーセンテージになっています。
事業区分 みなし仕入率 該当する事業 第一種事業 90% 卸売業(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業)をいいます。 第二種事業 80% 小売業(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで販売する事業で第一種事業以外のもの)をいいます。 第三種事業 70% 農業(※)、林業(※)、漁業(※)、鉱業、建設業、製造業(製造小売業を含みます。)、電気業、ガス業、熱供給業及び水道業をいい、第一種事業、第二種事業に該当するもの及び加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を除きます。 ※平成31年(2019年)10月1日を含む課税期間(同日前の取引は除きます。)からは、農業、林業、漁業のうち、消費税の軽減税率が適用される飲食料品の譲渡に係る事業区分が第三種事業から第二種事業へ変更されます。
第四種事業 60% 第一種事業、第二種事業、第三種事業、第五種事業及び第六種事業以外の事業をいい、具体的には、飲食店業などです。 なお、第三種事業から除かれる加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業も第四種事業となります。
第五種事業 50% 運輸通信業、金融・保険業 、サービス業(飲食店業に該当する事業を除きます。)をいい、第一種事業から第三種事業までの事業に該当する事業を除きます。 第六種事業 40% 不動産業 国税庁:簡易課税の区分
たとえば課税売上が100万円の卸売業だと、みなし仕入れ率は90%なので、みなし経費は90万円です。つまり、売上にたいしてパーセンテージで経費をいれています。
そして支払うべき消費税額は8千円です。
(100万×8%-100万×8%×90%=8,000円)
すみません…お待たせしました。
ここからは本題にもどり、簡易課税を選択したほうがいいパターンについて解説します。
- 人件費など消費税がかからない経費が多い職種
- みなし仕入れ率が高い職種
人件費など消費税がかからない経費が多い職種
消費税には、消費税がかかる経費とかからない経費があります。その代表例がお給料です。
お給料は消費税がかからない経費なので、お給料が高い業種は支払う消費税額も高くなりがちです。
たとえばウェブサービス業の会社の試算表がこれだとしましょう。
ホスメモの試算表(所得税用) | 消費税用 | |
売上 | 1,000 | 1,000 |
給与手当 | 500 | 0 |
旅費交通費 | 100 | 100 |
通信費 | 100 | 100 |
接待交際費 | 100 | 100 |
経費合計 | 800 | 300 |
所得 | 200 | 700 |
ご覧のように、消費税の計算用では、お給料が0円になっていますよね?その結果、所得が700万円まで増えてしまいました。ちなみに支払う消費税額は700万円×8%で56万円です。
このように人件費などの消費税がかからない経費が多い職業、たとえばWeb開発、会計事務所、弁護士事務所、開業医、介護などでは、簡易課税を選択したほうがいいかもしれません。
みなし仕入れ率が高い職種
簡易課税では事業の区分によって、みなし仕入れ率が違いましたよね。そのため、みなし仕入れ率が高い卸売業、小売業の方は、簡易課税のほうが有利になることがあります。
たとえば人を雇って国内でせどりをしている方は、簡易課税を選択したほうが有利だと思いますよ。経営者によって、試算表の状況もちょっとずつ異なるので確実なことは言えないですが…
まとめ:消費税で簡易課税を選んだほうが有利なのは人件費が多い職種です
消費税で簡易課税を選んだほうがいいのは、下記の2パターンでした。
- 人件費など消費税がかからない経費が多い職種
- みなし仕入れ率が高い職種
私の経験からいえば、人件費が多い、会計事務所、Web開発、介護などは簡易課税を選んだ方が有利だと思います。
忘れないでほしいのですが、簡易課税を選択すると最低でも2年間は変更できません。もし不利なのに簡易課税を選んでしまって、そのあとも変更できない。なんてなるとストレスが溜まるので、よく考えてください。
それでは今日はおしまいにします。
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