「貸倒引当金の仕訳を知りたい」
「貸倒損失は計上しても平気なの?」
上記のような疑問にお答えします。
税法上、債務確定主義で経費を計上するのですが、、、貸倒引当金繰入は債務が確定していなくても経費計上できますよ。
いわゆる特例的な扱いです。
また貸倒損失を計上するときは、適切な証憑がないと否認されるリスクを負いますので注意してくださいね。
貸倒引当金の仕訳
貸倒引当金を計上するときの仕訳はこちらです。
日付 | 借方 | 借方金額 | 税区分 | / | 貸方 | 貸方金額 | 税区分 | 摘要 |
12/31 | 貸倒引当金繰入 | 10,000 | – | / | 貸倒引当金 | 10,000 | – | 一括評価 |
この仕訳の意味は、「売掛金が回収できないリスクに備えて、一部だけ経費を算入しておく」ということ。
貸倒引当金繰入は費用科目なので、いわゆる経費です。
いっぽうで貸倒引当金は負債科目で、売掛金が貸し倒れたときの積立金の役割になります。
税務上は、債務確定主義にもとづいて「債務が確定しないかぎり経費計上は認めないの」が原則なんですけどね。
引当金については債務が確定してなくても経費計上できます。
すこしでも節税されたいのであれば、引当金を計上しましょう。
貸倒引当金の限度額の計算は厳しめ
貸倒引当金を計上すると、債務が確定していない(領収書もレシートもない)にもかかわらず、経費を作れますよね?
そうすると国からすれば、脱税に利用されてしまうリスクが潜んでしまいます。
これを防ぐために、貸倒引当金繰入額の計算は細かいルールが決められました。
計算方法はこちら。
貸倒引当金の設定対象事業年度末の一括評価金銭債権の帳簿価額に、過去3年間の貸倒損失発生額に基づく実績繰入率を乗じて計算します。
繰入限度額 = 期末一括評価金銭債権の帳簿価額 × 貸倒実績率(注)
国税庁:貸倒引当金繰入
この計算方法は、期末の売掛金残高に貸倒実績率を掛け合わる手法です。
じつは売掛金を取引先ごとに個別評価する方法もありますが、、、中小企業の場合は期末一括評価で十分ですね。計算がめんどうすぎるので…
ちなみに個別評価するという考え方は、
- 棚卸しの原価計算
- 簡易課税の事業区分
- 固定資産の減価償却費の計算
などで共通するものなので、覚えておくと便利です。
中小企業なら貸倒実績率の計算で特例あります
上記の式で貸倒実績率を計算するときに、中小企業では特例がありますので、こちらを採用しましょう。
繰入限度額
- 次の算式により計算します。
- (注) 法定繰入率は下表のとおりです。
国税庁:貸倒引当金繰入
たとえばネットショップを運営していて、期末に100万円の売掛金があるとします。
この場合の貸倒引当金は1万円(100万×1%)ですね。
ネットショップは小売業なので、10/1000を100万円に乗じました。
仕訳にしましょう。
日付 | 借方 | 借方金額 | 税区分 | / | 貸方 | 貸方金額 | 税区分 | 摘要 |
12/31 | 貸倒引当金繰入 | 10,000 | – | / | 貸倒引当金 | 10,000 | – | 一括評価 |
これなら計算方法がラクですよね。
貸倒実績率の計算方法【原則】
いっぽうで原則的な貸倒実績率の計算方法はつぎのとおりになります。
貸倒実績率は、次の算式により、小数点以下4位未満を切り上げて計算します。
貸倒実績率 = (A×B)/C
- A: その事業年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度の売掛債権等の貸倒損失の額
+その各事業年度の個別評価分の貸倒引当金繰入額の損金算入額
-その各事業年度の個別評価分の貸倒引当金戻入額の益金算入額- B: 12/左の各事業年度の月数(※)の合計額
- C: その事業年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度終了の時における一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額 ÷ 左の各事業年度の数
※ 算式中の「月数」については、暦に従って計算し、1か月に満たない端数が生じたときは、これを1か月とします。
国税庁:貸倒引当金繰入
上記のとおり、過去3年分の貸倒損失を集計し、個別評価した貸倒引当金繰入も計算しなくていけないので面倒すぎます…
手間がかかるうえに経費になる金額も微々たるものなので、大手企業でない限りは、原則的な方法で貸倒実績率を計算しなくていいのかなと思いますw
つづいては、どのように売掛金を貸倒にするか判定する手順を解説しようと思います。
貸倒損失が計上できるか判定する方法
売掛金の回収見込みがなくて、貸倒損失を計上したいときって往々にしてありますよね。
貸倒損失が計上できるか判定する方法は3つあります。
- 金銭債権が切り捨てられた場合
- 一定期間取引停止後弁済がない場合等
- 金銭債権の全額が回収不能となった場合
国税庁:貸倒損失として処理できる場合
①は会社法や民事再生法灯等によって、債権が消滅してしまった金額があるときですね。
②はいわゆる自然消滅的に売掛金が回収できなくなったとき。
③は書面によって、正式に債務免除を確定させたときです。
貸倒損失を計上するときは資料を残そう
もし税理士に「貸倒損失を計上したい」と伝えると、たいていの税理士はしぶると思います。
なぜかというと、
- 貸倒損失を計上した証憑を税理士と経営者で揃える必要がある
- 税務署が否認しやすいリスクが含まれる
- ぶっちゃけめんどくさい
からですね。
たとえば一般的な経費であれば、レシートや領収書等が証憑となるので、内容を把握できますよね。
いっぽうで貸倒損失を計上するときは、相手から証憑をもらえないケースが多いので、ご自身で準備しなければいけません。
なのでたとえば、
- 請求書
- 売掛帳
- 通帳明細
- 債権回収のための郵送記録
などの資料を揃えて、
- 最後に取引があったのはいつで
- 継続的な取引があったのか
- いくら入金がないのか
- 支払催促の有無等
を立証できるようにする必要があります。
こんな感じで、貸倒損失を計上するときは、ご自身で証憑を集める必要があるので、不備があると税務署から否認されるリスクが含まれています。
そのためリスクを考えると、税理士が貸倒損失を計上することを渋るかもですね…
でも貸倒れたことが事実であれば、貸倒損失を計上してもOKです。
当たり前かもですがw
それに貸倒損失で所得税or法人税と消費税が節税になりますからね。
まとめ:節税するなら貸倒引当金の仕訳も知っておこう
税法上、経費は債務確定主義で判断しますが、引当金については例外的に債務が確定する前から経費計上ができました。
しかし、これだと脱税がカンタンにできてしまうので、貸倒引当金の限度額は細かいルールが設けられています。
中小企業であれば、売掛金を一括評価して、貸倒実績率は特例の法定繰入率を適用するのがいいのかなとおもいます。
また実際に貸倒損失を計上するときは、証憑をしっかり準備しましょうね。
「税務調査に入られやすい…」とかいって、税理士が否定的な発言をしたとしても、貸倒れが事実で証憑もあれば貸倒損失を計上できます。
経営者さんごとに判断が分かれると思いますが、ご自身にとってベストな会計処理方法を選択してください。