「合同会社で消費税を節税したい」
「消費税免除の方法を教えて!」
上記のような疑問に、会計事務所歴5年のホスメモがお答えします。
会社設立をすると、最大で2年間消費税の納税義務を免除してもらえます。
消費税の納税義務の判定は、節税効果がデカいので確実に適用しましょうね。
けっこう専門的な話しになってくるので、「難しいかも」と感じた方は税理士に依頼したほうが無難だと思います。
それでは確認していきましょう。
合同会社を設立したときに消費税を2年間免除する方法
ご存じかもしれませんが、小規模の事業者の事務負担を配慮する観点から、起業した1年目および2年は消費税の納税義務を免除することができます。
新たに設立された法人については基準期間が存在しないため、設立1期目及び2期目は原則として免税事業者となります
国税庁:新規法人設立で消費税免税
しかしながら、消費税の納税義務が免除されないケースも実はあるんですよね。
そこで合同会社を設立したときは下記の条件も満たすようにしましょう。
- 消費税の免税1年目:資本金を1,000万円未満にする
- 消費税の免税2年目:特定期間の課税売上or給与支払い額が1,000万円以下
消費税の免税1年目:資本金を1,000万円未満にする
資本金が1,000万円以上になると、「小規模事業者に係る納税義務の免除」が適用されなくなってしまうんです。
「小規模事業者に係る納税義務の免除」というのは、基準期間における課税売上が1,000万円以下なら消費税の納税義務を免除しますよという規定。
ようするに、「資本金を1,000万円も用意できる法人は、消費税法上では、小規模事業者とはいえないよね。」と解釈されているわけ。
どうしても資本金を1000万円にしたいときは、消費税の免税を受けてから増資にしましょう。
消費税の免税2年目:特定期間の課税売上or給与支払い額が1,000万円以下
これもややこしいのですが、1年前の事業年度の前半6か月間で、課税売上or給与支払額が1,000万円以下であれば、2年目の消費税の納税義務も免除にできます。
たとえば12月決算の会社であれば、前年度の1月から6月までの6か月間で課税売上or給与支払額が1,000万円以下になればOK。
給与支払額については支給日ベースで判定しますので、未払いの給与は計算に含めません。
なので、1,000万円を超えてしまいそうなときは、役員報酬を未払いのままにしたり、給与支払いを当月締め翌月払いにすると要件を満たしやすいですよ。
恣意的に納税義務の判定を調整できてしまうので、特定期間の要件さえ事前に知っておけばカンタンに回避できますよね?
以上までが、合同会社を設立したときに消費税を2年間免税にする方法でした。
ここからはさらに、消費税の納税義務ので免除でよくある論点を掘り下げていきます。
読めば読むほど、内容が複雑になっていくので「難しいかも」と感じたかたは税理士さんに依頼したほうが無難かもしれません。
合同会社の消費税納税義務の免除でよくある論点
会社設立の消費税免除でよくある論点をまとめてみました。
- 課税売上の範囲は?
- 課税売上高は税抜き?
- 基準期間が1年未満だったら?
1、課税売上高の範囲は?
課税売上高の範囲をどこまでするか、けっこう深い論点です。
簡単なところからいうと、課税売上高は①売上と②雑収入等の合計からもとめます。
なので損益計算書で売上の合計だけを見ていると、見逃しやすいので気をつけましょう。
また輸出売上も課税売上高の範囲に含まれるのは見逃しやすいと思います。
たとえばせどりで海外に自動車部品を輸出していて、基準期間で輸出売上が1,000万円を超えていたとしましょう。(ほかには売上がないものとします。)
すると不思議なことに、当期では消費税の納税義務が免除にならないんですよね。
課税売上高は、輸出などの免税取引を含め、返品、値引き、割戻しをした対価の返還等の金額を差し引いた額(税抜き)です。
国税庁:納税義務の免除
というのも輸出売上というのは、課税資産の譲渡等の対価を、特別な規定で免税としているものと解釈されるから。
もともとは課税取引なんです。
なので納税義務の判定では、輸出売上は「課税売上高」に含まれます。
ほかにも課税売上高の範囲の論点はけっこうたくさんあるので、課税売上高が1,000万円ギリギリ下回るときはよく調べたほうがいいですよ。
2、課税売上高は税抜き?
消費税の納税義務の判定で、課税売上高は税抜きor税込みのどちらで判定するべきかもよく迷います。
結論をいうと、基準期間の事業年度で課税事業者のときは税抜きで判定し、免税事業者のときは税込みで判定します。
その事業者の基準期間における課税売上高の算定に当たっては、
免税事業者であった基準期間である課税期間中に当該事業者が国内において行った課税資産の譲渡等に伴って収受し、
又は収受すべき金銭等の全額が当該事業者のその基準期間における課税売上高となることに留意する。
たとえば2020年の課税売上高が税込みで1,100万円のときに、2022年は消費税の課税事業者に該当するのか考えます。
このケース、税抜きで判定すれば課税売上高が1,000万円になるので免税事業者ですが、税込みで判定すると課税事業者になってしまうんですよね。
それで仮に2020年は課税事業者だとすれば、基準期間の課税売上高は税抜きの1,000万円と判断され、2022年は免税事業者になります。
なぜ税抜きで判定するかというと、消費税額の100万円は納税するからです。
いっぽうで免税事業者は納税しないので、税込みで判定すべしというわけ。
ほんと、課税売上高が1,000万円前後になると税務署に狙われる理由がわかりますよねw。
3、基準期間が1年未満だったら?
基準期間が1年未満のときもあるんですよ。
例をあげると、
- 基準期間の途中で事業を廃止して再開したとき
- 基準期間の途中で新たに事業を始めたとき
- 基準期間の途中で事業を廃止したとき
です。ビジネスは不安定なものですね。
で、このときの課税売上高はいくらになるのか疑問が残るのですが、個人と法人で判定方法が異なります。
- 個人:あくまで12月31日までの1年間で1,000万を超えていないかで判定
- 法人:課税売上高を1年分に換算して判定
法人では課税売上高を1年分に換算して判定
注意すべきは法人で、基準期間における課税売上高を1年間に換算して判定します。
式にするとこちらです。
基準期間が1年でない法人の場合は、原則として、1年相当に換算した金額により判定することとされています。具体的には、基準期間中の課税売上高を、基準期間に含まれる事業年度の月数で割った額に12を掛けて計算した金額により判定します。
国税庁:納税義務の免除
たとえば12月決算の法人で、基準期間における事業年度の月数が6月から12月までの6か月間だけで、その間の課税売上高が800万円だとしますね。
上記のケースで消費税の納税義務の免除を判定すると、
基準期間における課税売上高は、800万 × 12 ÷ 6 =1,600万となり、1,000万円を超えるため消費税の納税義務は免除されません。
かなりややこしいですね…。
消費税で納税義務があるか、ないかは非常に重要な論点です。
きっちり押さえて節税に生かしましょう。
まとめ:合同会社を設立したときは消費税免除を確実に
合同会社などの会社を設立したときは、原則、2年間は消費税の納税義務を免除してもらうことができました。
ただし、これには条件が2つありました。
- 消費税の免税1年目:資本金を1,000万円未満にする
- 消費税の免税2年目:特定期間の課税売上or給与支払い額が1,000万円以下
どちらの要件も、事前に把握していれば要件が満たせるように調整ができます。
知っているか、知っていないかの世界なので確実に押されておきましょう。
また消費税の納税義務の判定は、じつはけっこう深い論点で細かくチェックされがちです…。
代表的な例として下記の3つをまとめましたが、
- 課税売上の範囲は?
- 課税売上高は税抜き?
- 基準期間が1年未満だったら?
まだまだ注意すべきこともあります。
もし「難しいかも」と感じたら単発でもいいので税理士に相談したほうがいいと思いますよ。
節税額を考えれば、税理士に相談したほうがコスパいいです。