「火災保険が入金されたときの仕訳は?」
「勘定科目は何になるの?」
「確定申告すべき?」
上記のような疑問に、会計事務所歴6年のホスメモがお答えします。
結論をいうと、火災保険が入金されたときの仕訳は雑収入で計上するほうが、消費税の構造上、有利です。
ただし修理代と保険金の差額は所得税が非課税になるので注意してください。
保険金は所得税が非課税と機械的に考えている人が多いです。
しかしながら保険金でも売上の補填とみなされれば、売上で計上するので課税されます。
火災保険の入金は、所得税と消費税の両方の観点から考えるので、深い論点になります。
個人の不動産オーナー向けに書きました。ぜひ参考にしてください。
🌞本記事の内容
・火災保険からの入金は確定申告すべきか
・火災保険が入金されたときの仕訳
火災保険から入金は確定申告すべき?
火災保険からの入金は2パターンあります。
- 商品の損害の補填:売上で計上し、所得税は課税
- 商品等以外の損害:修理代と同額を雑収入で計上
1,商品の損害の補填:売上で計上し、所得税は課税
たとえばコンビニの事業者が、地震でワインが割れてしまったとき損害保険金をもらうと、その保険金は売上で計上します。
というもの、補償の対象が売上の補填を意味してしまうからです。
例えば、事業者の店舗や商品が火災で焼失した場合、焼失した商品の損害保険金は事業収入(売上げ)になります。
また、焼失した店舗の損害保険金は店舗の損失額を計算する際に、差し引くことになります。
国税庁:保険と税
いっぽうで商品等以外の損害では修理代との差額だけ、所得税が非課税です。
2,商品等以外の損害:修理代と同額を雑収入で計上
火災保険から入金があったときは修繕費を補填したあとの残金だけ、所得税が非課税となります。
注意してほしいのは修繕費は費用計上し、損害保険金は収入計上しないという帳簿は作れません。
損害保険金を受け取る場合も、保険料の負担者や支払原因によって課税関係が異なってきますが、保険を掛けていた方が建物の焼失や身体の傷害・疾病を原因として受け取る保険金には、原則として課税されません。
国税庁:保険と税
たとえばアパートの外壁が崩れてしまって、火災保険で修理するとします。
- 業者に外壁の原状回復工事を依頼し、30万円を払う
- 火災保険会社に連絡をして、保険金30万円を受け取る
「損害保険金は非課税だ」と機械的に考えてしまうと、①は修繕費で計上して、②は仕訳なしにしてしまいそうですが、これは誤りです。
上記の例では、両建てで仕訳を作るのが正解です。
※記事の後半でどちらが有利か解説します。
その根拠がこちらです。
(非課税とされる保険金、損害賠償金等)
第三十条 法第九条第一項第十七号(非課税所得)に規定する政令で定める保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)は、次に掲げるものその他これらに類するもの(これらのものの額のうちに同号の損害を受けた者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額が含まれている場合には、当該金額を控除した金額に相当する部分)とする。
所得税法:第三十条
かみ砕いて説明すると、損害賠償金で所得税が非課税になるのは、差額のみです。
だから修繕費に相当する損害賠償金は非課税にはなりませんよと言っています。
たしかにそりゃあそうですよね。
もし損害賠償金が全額非課税でいいなら、修繕費だけ計上してしまえば、節税できてしまいます。
なのでもし保険金のほうがおおければ、所得税は非課税なので、差額は事業主貸で処理します。
いっぽうで修理費のほうがおおければ、差額のみを修繕費ですね。
火災保険からの入金があるときは、修繕費の計上漏れに気を付けましょう。
火災保険が入金されたときの仕訳は?
火災保険が入金されたときの仕訳は3パターンあります。
じつは帳簿のつけ方によって消費税が節税できるか否かが変わるんです。
- 両建てで仕訳を作る:本則課税で有利
- 事業主貸で処理する
- 売上の補填の場合
1,両建てで仕訳を作る:本則課税で有利
消費税の課税事業者で、本則課税で申告されているときは、両建てで仕訳を作りましょう。
そのほうが、消費税の経費を多く計上できます。
下記の例で仕訳にしますね。
- 外壁修理ため、あなたは業者に15万円を支払った
- 保険会社からあなたへ18万円の入金があった
修理代を払ったときの仕訳。
日付 | 借方 | 借方金額 | 税区分 | / | 貸方 | 貸方金額 | 税区分 | 摘要 |
3/15 | 修繕費 | 150,000 | 課税仕入れ10% | / | 現金 | 150,000 | – | 外壁修理 |
続いて火災保険の入金があったときの仕訳。
日付 | 借方 | 借方金額 | 税区分 | / | 貸方 | 貸方金額 | 税区分 | 摘要 |
3/31 | 現金 | 180,000 | – | / | 雑収入 | 150,000 | – | 火災保険 入金 |
事業主貸 | 30,000 | 差額 非課税 |
※修繕費の補填を超える金額は、所得税が非課税です。なので事業主貸で処理します。
ここで注目していただきたいのは、修繕費と雑収入の税区分です。
修繕費は「課税仕入」となりますが、雑収入は「対象外」です。
なぜこのようになるかというと、保険会社とは消費税の課税関係が満たされないからです。
- 修理業者はあなたに役務の提供をしている。よって課税取引。
- いっぽうで保険会社はあなたに損害賠償金を払うだけなので、対価性がない。よって対象外。
根拠はこちらですね。
破損した事業用資産を自己において修理した場合には、その支払った修理の費用については課税仕入れに該当し、仕入税額控除の対象となります(基通11-2-10)。
なお、その費用について加害者から補償金を受け入れた場合には、その受入れ補償金については課税関係は生じません(基通5-2-5)。損害に係る保険金収入についても同様です(基通5-2-4)。
国税庁:損害を被った場合の修理の費用
消費税を考えるうえでは、だれがなにをしたのかによって、課税関係が変わるので注意してください。
よくある例で、クレジットカード手数料が課税or非課税の論点と同じです。
まとめると、上記の例では両建てで仕訳をしたほうが消費税の計算上、経費の金額は増えます。
なので消費税を本則課税で申告されている方は、こちらの仕訳がおすすめです。
続いては事業主貸で処理するパターンです。
2,事業主貸で処理する
修繕費のほうが損害保険金よりおおくならない限り、所得税には影響ありません。
なのであえて修繕費と、損害保険金の両方を事業主貸で処理をして、損益計算書に反映させない方法もあります。
仕訳にしましょう。
修理代を払ったとき。
日付 | 借方 | 借方金額 | 税区分 | / | 貸方 | 貸方金額 | 税区分 | 摘要 |
3/15 | 事業主貸 | 150,000 | – | / | 現金 | 150,000 | – | 外壁修理 |
つづいて保険金の入金です。
日付 | 借方 | 借方金額 | 税区分 | / | 貸方 | 貸方金額 | 税区分 | 摘要 |
3/31 | 現金 | 180,000 | – | / | 事業主貸 | 180,000 | – | 火災保険 入金 |
このように、どちらも事業主貸で処理する方法もあります。
しかしながら上記の方法は原則的な処理ではありません。
消費税法の考え方に従えば、火災保険が入金されたときに雑収入で計上したほういいです。
というもの消費税法は「総額処理」を原則としています。
また企業会計原則も「総額主義」を採用してますし。
帳簿のつけ方のテクニックとして、心にとどめておいてください。
3,売上で計上する
保険金の対象が売上の補填とされるときは、売上で計上します。
対価がないので、消費税は非課税ですね。
日付 | 借方 | 借方金額 | 税区分 | / | 貸方 | 貸方金額 | 税区分 | 摘要 |
3/31 | 現金 | 180,000 | – | / | 売上 | 180,000 | – | 火災保険 入金 |
まとめ:火災保険の入金は雑収入で処理するのがいいでしょう
火災保険の入金があったときの仕訳方法はこちらでした。
- 両建てで仕訳を作る:本則課税で有利
- 事業主貸で処理する
- 売上で計上する
損害保険金にかかる所得税は非課税とされていますが、修理代があるときは差額のみが非課税になります。
間違えないように注意してください。
今日は以上でおわります。
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