個人事業主の給与の仕訳は?【受け取り側vs支払う側】

「個人事業主の給与の仕訳は?」

「源泉徴収されたらどうする?」

 

上記のような疑問に、会計事務所歴6年のホスメモがお答えします。

 

個人事業主が受け取る給与は、帳簿上は全額「事業主貸」で処理しますよ。

理由はわかりますか?帳簿を作成している所得と給与所得の種類が違うからです。

 

じつは所得税法上では、所得を10種類に分けていて、確定申告でまとめて申告します。

それでお給料は給与所得になり、帳簿が必要ありません。

 

ここまで説明した記事は少ないので、ぜひ最後までお付き合いください。

 

個人事業主のお給料の仕訳は?【受け取り側】

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個人事業主が事業とはべつに、会社に属していてお給料をもらったときの仕訳はこちら。

 

日付 借方 借方金額 税区分 / 貸方 貸方金額 税区分 摘要
5/31 普通預金 200,000 対象外 事業主貸 200,000 対象外 給与

 

上記のとおり、「事業主貸」で処理しましょう。

源泉徴収されたケースもあると思いますが、一括で事業主貸でOKです。

帳簿上は給与の入金はまったく関係ありませんので。

 

また「事業主貸」と「事業主借」で判断に迷う人が多いのですが、どちらか一方を使えば大丈夫です。

というのも結局、元入金に含まれるから。

詳しくは「事業主貸が多いと変?生活費の仕訳はどうする?」を参照してください。

 

ではなぜ入金があった給与を「事業主貸」で仕訳を作るか。

そのワケは、個人事業と給与では所得の種類が違うからなんです。

所得の種類ごとに帳簿を作る(事業所得、不動産所得、雑所得等)

所得税法上、所得の種類は10種類にわかれており、それぞれで税金を計算方法が違います。

 

たとえば給与は給与所得で、原則、経費は算入できません。

そのかわりに給与所得控除が概算経費の役割を果たしています。

なので給与から経費を引くことはできませんが、給与所得控除は控除できます。

 

いっぽうで個人事業主は売上に必要な経費を算入できますよね。

いわゆる事業所得は経費を入れれます。そのかわりに給与所得控除はありません。

 

このように所得の種類ごとに税金の計算方法が全然違うんです。

だから事業所得を管理するための帳簿に、給与の入金があったとしたら、事業所得とは無関係なので「事業主貸」で仕訳を作るのでした。

 

ちなみに帳簿を作るは、事業所得、不動産所得、雑所得がおもなケースです。

所得の種類については「所得と収入(売上)の違いは?10種類もあるの?」で解説しています。

 

給与収入の情報は確定申告書に直接記載します

お給料の入金は個人事業とは無関係なので、事業主貸で処理しましたよね。

 

では給与収入の情報はどこに記載するのかというと確定申告書に書きます。

具体的には確定申告書の第一表と第二表に収入額、給与所得額、源泉徴収税額等を記載します。

 

といってもよくわからないですよね。

もしご自身で確定申告をされるなら、freeeが便利です。

源泉徴収票に記載がある数字を指示にしたがって入力するだけで、確定申告書に反映されるので意味が分からなくても大丈夫です。

詳細は「会社などから受け取った給与を記入する(給与所得)」でご確認ください。

個人事業主のお給料の仕訳は?【支払う側】

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さてつづいては給与を支払ったときの仕訳。

30万円の給与を払ったときの仕訳を例します。

 

✔前提条件

・給与は30万円

・30万円のうち1万円は通勤手当です。

・住民税は特別徴収で管理しています。

・給与は毎月25日締め、当月月末払いです。

・フルタイム勤務なので、社会保険、雇用保険に加入

 

日付 借方 借方金額 税区分 / 貸方 貸方金額 税区分 摘要
4/30 給与手当 290,000 / 現金 237,515 4月給与
旅費交通費 10,000 課税仕入10% 通勤手当
預り金 27,450 厚生年金
預り金 14,805 健康保険
預り金 900 雇用保険
預り金 6,750 源泉所得税
預り金 12,580 住民税

 

ずいぶん複雑な仕訳になりました。

給与を払う側の仕訳は管理すべき預り金が多く、けっこうな手間がかかります。

この管理が帳簿上できなくて、税理士に帳簿を依頼する人がいるくらいです。

 

一つずつ解説しますね。

 

貸方の仕訳:給与手当+旅費交通費

貸方の仕訳の論点は、①勘定科目を分ける、と②通勤手当の税区分です。

 

今回の例では通勤手当を旅費交通費としましたが、給与手当としているケースもあります。

税法上は、どちらの勘定科目を使っても影響がないので自由に設定してください。

 

ただし、税区分には気をつけましょう

通勤手当の税区分は課税仕入れになります。もし給与手当を使うのであれば、通勤手当の1万円分のみ、課税仕入れで処理しないと不利になります。

 

私は税区分がわかりやすく管理できるので、通勤手当は旅費交通費で処理してますね。

詳細は「通勤手当は非課税?消費税はどうなるの?【仕訳で解説】」をご覧ください。

 

借方の仕訳:現金+預り金

借方の仕訳の論点は、預り金の管理ですね。これにつきます。

 

社会保険料、雇用保険、源泉税、住民税はいったん会社が預かって、会社がまとめて納付しますよね。なので給与仕訳を作るときは預り金で処理します。

私の場合は、それぞれに補助科目もつけて一目で残高をわかるようにしてます。

 

預り金を入力した後は、引いた差額が差引支給額になるので「現金」で処理すればOKです。

 

ちなみにこちらの仕訳もさまざまなパターンがありますよ。

社会保険料と雇用保険を預り金で残高を管理するのがめんどうなときは、「法定福利費」を使います。

 

給与の仕訳作成時は従業員負担分のみ法定福利費でマイナス計上しますが、納付時に会社負担分と従業員負担分の両方を費用計上するので、残高は常にプラスになるという手法です。

 

また給与を当月払いではなく翌月払いにしていれば「未払費用」にします。

 

このように給与の仕訳は、会社ごとにけっこう違うものです。

大事なのは預り金の仕訳と残高管理なので、ここだけしっかりできていれば大丈夫です。

 

もし預り金の残高確認方法がわからない方は「給与の仕訳は?預り金はどうすればいい?

の後半を読んでみてください。画像を使い、残高管理の方法を解説しています。

 

今回は以上で終わります。

またどこかの記事でお会いしましょう!

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