「補助金で固定資産を買ったときの仕訳は?」
「圧縮記帳をしたほうが有利ってほんと?」
「圧縮記帳の仕訳も教えて!」
上記のような疑問に御答えします。
補助金や助成金をもらい、固定資産を買ったときは圧縮記帳ができますよ。
最近でいうと事業再構築助成金を受けた経営者さんは、繰越欠損金がなければ、圧縮記帳したほうが有利だと思います。
助成金を受けた影響で大幅な利益になり税金が払えない…といった資金ショートをさせないためにも圧縮記帳を検討しましょう。
補助金で固定資産を買ったときの圧縮記帳の仕訳
補助金で固定資産を購入し、圧縮記帳をするまでの流れを仕訳にしました。
- 固定資産の購入
- 補助金の入金
- 圧縮記帳
- 減価償却
固定資産の購入
まずは固定資産を購入したときの仕訳です。
ここではサーバーを300万円で購入したとしますね。
日付 | 借方 | 借方金額 | 税区分 | / | 貸方 | 貸方金額 | 税区分 | 摘要 |
4/1 | 工具器具備品 | 3,000,000 | 課税仕入10% | 現金 | 3,000,000 | – | サーバー購入 |
補助金の入金
で、その後、補助金100万円の入金ありました。
補助金は雑収入になります。消費税は対象外ですね。
日付 | 借方 | 借方金額 | 税区分 | / | 貸方 | 貸方金額 | 税区分 | 摘要 |
5/1 | 現金 | 1,000,000 | – | 雑収入 | 1,000,000 | 対象外 | 補助金 |
もし圧縮記帳をしない場合、雑収入の100万円を計上しなければいけないので、利益が残れば税金がかかります。
そのため、圧縮記帳でこの雑収入100万円を相殺したほうが有利です。
圧縮記帳
補助金の入金があったので、圧縮記帳をしますね。
圧縮記帳には2種類あり、直接減額方式と積立金方式があるのですが、直接減額方式で仕訳をしましょう。
積立金方式は仕訳数も増えますし、法人税申告書で税額を調整するのでかなりめんどうです…
直接減額方式による圧縮記帳はこちら。
日付 | 借方 | 借方金額 | 税区分 | / | 貸方 | 貸方金額 | 税区分 | 摘要 |
5/1 | 固定資産圧縮損 | 1,000,000 | – | 工具器具備品 | 1,000,000 | – | 圧縮損 |
上記のような感じで、圧縮損を計上することで工具器具備品の残高を減らしています。
減価償却
そして最後は、決算時に減価償却費を計上します。
これで圧縮記帳はおわりです。
日付 | 借方 | 借方金額 | 税区分 | / | 貸方 | 貸方金額 | 税区分 | 摘要 |
12/31 | 減価償却費 | 1,200,000 | – | 工具器具備品 | 1,200,000 | – | 減価償却 |
圧縮記帳を管理するうえでのポイント
雑収入と圧縮損は損益計算書の特別利益と特別損失に計上すると管理がラクです。
内訳を見れば「圧縮記帳で利益と損失があったんだな」とわかるからですね。
しかし、特別利益や特別損失があると、「なにがあったんだろう」と税務官に気にかけられるかもという意見もあります。
正しい処理をしているので、こんなことまで気にかける必要はありませんが、税務署に敏感になっている方もおられますよね。
このあたりは臨機応変に対応してください。
圧縮記帳にも種類があります…
じつは圧縮記帳は種類があります…
- 補助金で固定資産を購入
- 保険で備品を買い替えたときの差額
- 立ち退き等で国に土地等を売ったとき
- 同じ種類の固定資産を交換したときの差額
などほかにまだ圧縮記帳がつかえるケースがあるんですよね。
しかもそれぞれで、圧縮限度額がありますし、圧縮記帳をするうえでも条件があります。
ややこしくてすみません…
補助金で固定資産を購入したときは、一番よくあるパターンで、しばりはないのでとくに意識することはないです。
ところで圧縮記帳で節税になるの?
圧縮記帳をすれば、節税になります。
つぎの条件で圧縮記帳ありなしで、ほんとうに節税になるのか検証してみました。
✔️前提条件
・耐用年数5年の固定資産を300万円で購入
・補助金は100万円
✔️ケース
ケース1:毎年100万円の所得があるとき
ケース2:毎年600万円の所得があるとき
ケース3:毎年所得が増えていくとき(税率差あり)
ケース4:毎年所得が減っていくとき(税率差あり)
上記の条件で検証を行なった結果、ケース4だけが節税になりました。
ケース | 圧縮記帳なし法人税額 | 圧縮記帳あり法人税額 | 増減 |
所得100万 | 630,000 | 630,000 | 0 |
所得600万 | 6,040,000 | 6,040,000 | 0 |
所得増加 | 4,954,000 | 4,966,000 | 12,000円増加 |
所得減少 | 1,716,000 | 1,704,000 | -12,000円減少 |
ケース4の「所得が減少」したときに節税になった理由は、法人税が所得によって税率に差がでるためですね。
なので今後利益が下がりそうな法人さんは、圧縮記帳で節税になります。
とはいえ、たとえ節税効果がなかったとしても、税金の支払は遅らせたほうが有利(金利や資金繰りで)なので、毎年のように所得が出ている法人さんは圧縮記帳をしておきましょう。
ただし、繰越欠損で赤字にできる法人さん注意です。
むしろ圧縮記帳をしないほうが有利に可能性があるからです。
どういうことかというと、圧縮記帳をしないほうが毎年の減価償却費を増やすことができるからですね。
またもう一つ節税対策があって、圧縮記帳後の取得価額が30万円未満になれば、少額減価償却資産の特例を併用できます。(法人税法上の圧縮記帳のみ)
まとめ:補助金で購入した固定資産は圧縮記帳を検討しましょう。仕訳は直接減額方式で
補助金で固定資産を購入したときは圧縮記帳が使えました。
仕訳のポイントは、補助金の入金は雑収入で計上し、そのあと圧縮損で固定資産の残高を減らすことですね。
所得が出ている法人さんであれば、圧縮記帳をしたほうが有利なケースが多いです。
気がついたときに計上していきましょう。