「消費税の決算仕訳は?」
「税込みと税抜き経理で仕訳が違う?」
上記のような疑問にお答えします。
この記事の内容
・消費税の決算仕訳
・消費税でチェックすべきこと
・会計ソフトで決算仕訳を作ろう
消費税の決算仕訳は、税込みと税抜き経理で違います
消費税の決算仕訳は2パターンあります。
- 税込み経理
- 税抜き経理
上記のどちらを選択するかで、違うので該当するほうだけ読んでいただければ大丈夫です。
会計事務所で働いている方だと、両方の処理方法を知っておかないとですけどね。会社によって、税込み経理、税抜き経理どちらかを選択してますから。
ちなみに、そもそも消費税の納税義務者に該当していなければ、消費税の決算仕訳は不要です。
詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
ホスメモ:いくらから消費税の確定申告は必要?計算方法は?【1,000万円】
1、税込み経理
税込み経理の場合だと、消費税の確定納付額は租税公課で処理します。
仕訳にしましょう。
日付 | 借方 | 借方金額 | 税区分 | / | 貸方 | 貸方金額 | 税区分 | 摘要 |
3/31 | 租税公課 | 30万 | – | / | 未払消費税等 | 30万 | – | 決算 |
上記のように、納付額は「租税公課」で費用計上でした。
いっぽうで消費税が還付になるケースでは、雑収入で計上します。
日付 | 借方 | 借方金額 | 税区分 | / | 貸方 | 貸方金額 | 税区分 | 摘要 |
3/31 | 未収消費税等 | 30万 | – | / | 雑収入 | 30万 | – | 決算 |
なかには雑収入ではなくて、租税公課のマイナスで計上してしまう方もおられますが、税引前当期純利益はどちらも変わらないので、どっちでもOK。
中間納付があるとき
中間納付がある場合については、納付時に租税公課で計上しておきましょう。
日付 | 借方 | 借方金額 | 税区分 | / | 貸方 | 貸方金額 | 税区分 | 摘要 |
11/30 | 租税公課 | 15万 | – | / | 現金 | 15万 | – | 中間納付 |
中間納付は忘れがちなのでよくチェックしたほうがいいですよ。
前期の消費税申告書を持ってきて、年税額が48万円を超えたときに、消費税の中間納付があるはずから。
中間申告は直前の課税期間の確定消費税額(注1)に応じて、次のようになります。
直前の課税期間の確定消費税額 48万円以下 48万円超から 400万円以下
400万円超から 4,800万円以下
4,800万円超 中間申告の回数 原則、中間申告不要 ただし、任意の中間申告制度あり(注2)
年1回 年3回 年11回 中間申告提出・納付期限 各中間申告の対象となる課税期間の末日の翌日から2月以内 (図1のとおり) 中間納付税額(注3) 直前の課税期間 の確定消費税額(注1)の6/12(注4)
直前の課税期間 の確定消費税額(注1)の3/12(注4)
直前の課税期間 の確定消費税額(注1)の1/12(注4)
1年の合計申告回数 確定申告1回 確定申告1回 中間申告1回
確定申告1回 中間申告3回
確定申告1回 中間申告11回
国税庁:消費税の中間納付
すこし専門的な話しをすると、消費税の申告書を作成するときに、消費税の中間納付額を国税と地方税に分けて、それぞれ記載します。
ここでは詳細は割愛しますが、申告書に中間納付額を記載するので、中間納付の有無は必ず確認しましょう。記載漏れすると税額が全然変わってしまいます…。
2、税抜き経理
さて税抜き経理の場合の消費税決算仕訳ですが、ちょっと難易度アップします。
仕訳を見てみましょう。
日付 | 借方 | 借方金額 | 税区分 | / | 貸方 | 貸方金額 | 税区分 | 摘要 |
3/31 | 仮受消費税等 | 75万300円 | – | / | 仮払消費税等 | 60万 | – | 相殺 |
未払消費税等 | 15万 | – | 決算 | |||||
雑収入 | 300 | – | 消費税差額 |
なにをしているかというと、①仮受消費税等と仮払消費税等の残高をゼロにする仕訳を作成し、②確定納付額を未払金で計上。
③端数で差額がでるので、これは雑収入で計上しているだけ。
パッと見は難しそうですが、貸借対照表の残高管理ができるレベルになっていれば、難しくはないです。
いっぽうで還付申告のときは、仮受消費税等と仮払消費税等の残高をゼロにして、未収消費税等を計上します。
日付 | 借方 | 借方金額 | 税区分 | / | 貸方 | 貸方金額 | 税区分 | 摘要 |
3/31 | 仮受消費税等 | 60万円 | – | / | 仮払消費税等 | 75万300円 | – | 相殺 |
未収消費税等 | 15万 | – | 決算 | |||||
雑損失 | 300 | – | 消費税差額 |
還付申告のときは、消費税差額は雑損失になるはずです。
中間納付があるとき
税抜き経理では、中間納付の支払はすべて仮払いで処理しましょう。
日付 | 借方 | 借方金額 | 税区分 | / | 貸方 | 貸方金額 | 税区分 | 摘要 |
11/30 | 仮払金 | 10万 | – | / | 現金 | 10万 | – | 中間納付 |
そして決算仕訳で仮払金を精算します。
日付 | 借方 | 借方金額 | 税区分 | / | 貸方 | 貸方金額 | 税区分 | 摘要 |
3/31 | 仮受消費税等 | 75万300円 | – | / | 仮払消費税等 | 60万 | – | 相殺 |
仮払金 | 10万 | 中間納付精算 | ||||||
未払消費税等 | 5万 | – | 決算 | |||||
雑収入 | 300 | – | 消費税差額 |
けっこう複雑な仕訳になってきましたw
税抜き経理では、仮受消費税等と仮払消費税等の残高を精算する仕訳を作れるかがポイントですね。
あと消費税を租税公課で処理することはないので、税込み経理と混乱しないようにしましょう。
決算でチェックすべき消費税3選
消費税のチェックで間違えやすいポイントを3つに厳選しました。
もう一度、消費税のチェックをしてみましょう。
- 請求額の一部に不課税や非課税がないか
- 固定資産売却時の消費税
- 売上の消費税区分
1、請求額の一部に不課税や非課税がないか
たとえば自動車の車検費用は、自賠責保険料と重量税が含まれているので、これらの費用分は非課税で、ほかの車検費用は課税で処理します。
請求書を見て、仕訳を作成していないと、このミスをしやすいので気をつけてください。
ほかにも、ゴルフ代に含まれるゴルフ利用税や、ホテル代のうち宿泊税も不課税ですね。
いっぽうで、海外の航空券代をすべて不課税で処理してしまうケースがありますが、正しくは国内空港利用料や航空券発行手数料は課税です。
細かい話しかもしれませんが、大企業では、取引件数も膨大なので一つひとつ細かく処理しないと大損してしまうんですよね。
中小企業で働いていたとしても、細かくチェックできたほうが評価されるので、意識したほうがいいですよ。
2、固定資産売却時の消費税
固定資産売却時の消費税区分は間違えやすいので要注意。
たとえば簿価200万円のアルファードが300万円で売れたとしましょう。
そのときの仕訳がこちら。
日付 | 借方 | 借方金額 | 税区分 | / | 貸方 | 貸方金額 | 税区分 | 摘要 |
4/1 | 現金 | 300万 | – | / | 車両運搬具 | 200万 | 課税売上10% | アルファード |
固定資産売却益 | 100万 | 課税売上10% | アルファード |
おそらく間違えやすいのが、車両運搬具の消費税区分ですね。
会計ソフトで入力すると、消費税区分は自動で対象外になりますが、ここでは手入力で課税売上に変更しなければいけません。
というのも、300万円の売上に消費税がかかるので、売却益と簿価の車両運搬具の両方を課税売上にして、合計金額を合わせるべきだから。
なので売却益の100万円だけが課税売上になるのは誤りでした。
請求書の消費税額を参照しながら仕訳を作れば、ここでの仕訳のミスは減ると思います。
詳しくはこちらの記事をどうぞ。
ホスメモ:固定資産を売却したときの仕訳は?消費税はどうすればいい?
3、売上の消費税区分
最後は売上の消費税区分をもう一度確認しましょう。
課税と非課税の区別だけはしっかり分けていると思うのですが、売上の消費税区分はさらに厳密に分けた方がいいですよ。
たとえば対象外、輸出売上、非課税売上、課税売上すべてきっちり分けてください。
というもの、課税売上割合に影響をあたえるからなんです。
とくに非課税売上の区分は要注意ですね。
非課税売上が増えると、課税売上割合が下がってしまい、仕入税額控除で全額控除できなくなってしまいます。
「ちょっと何を言っているのかわからない…」という方は下記の記事で、仕入税額控除の全額控除の要件を確認しましょう。
ホスメモ:売上が5億円を超えると消費税が不利になるの?【個別/比例】
課税売上割合が95%以上にならないと、仕入税額控除は全額控除できないんですよ。
まとめ:消費税の決算では、税込みと税抜き経理で仕訳パターンが違いました
消費税の決算仕訳は2パターンありましたよね。
- 税込み経理
- 税抜き経理
税込み経理では、消費税の納付額を「租税公課」で処理しました。
いっぽうで税抜き経理では、仮受消費税等と仮払消費税等の残高を相殺し、差額が納税額になるので「未払消費税等」を計上しましたよね?このとき端数の差額が生じますが、「雑収入」で処理するのでした。
消費税はミスが非常に多いので、なんどもなんども帳簿チェックしてもいいくらいです。
また処理に悩むことも多くなるので、限界を感じた時は消費税法に詳しい税理士さんに相談するのがベストだと思います。